日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

うつヌケ―うつトンネルを抜けた人たち

経験者によるうつ病ガイドブック

うつヌケ―うつトンネルを抜けた人たち
キーワード
うつ病
作者
田中圭一
作品
『うつヌケ―うつトンネルを抜けた人たち』
初出
「うつヌケ〜うつトンネルを抜けた人たち〜」
(メディアプラットフォーム「note」、
2014年12月3日〜2016年11月11日
https://note.com/keiichisennsei/m/m1e241522cab9
※2020/01/05アクセス確認)
単行本
『うつヌケ―うつトンネルを抜けた人たち』(角川書店、全1巻、2017年)

作品概要

 著者・田中圭一を含め、思想家の内田樹やロックミュージシャンの大槻ケンヂなど、うつ病にかかった17人の「うつヌケ」経験をベースにしたドキュメンタリーマンガ。最初のエピソードである田中圭一の話を含め、うつ病発症のきっかけになったことや、うつから抜け出すための努力、克服過程などが経験者の経験に基づいて説明されている。累計発行部数35万部を超える大人気作品となり、実写ドラマとしても制作されたほか、タイトルの「うつヌケ」は、2017年度の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされるなど、社会的注目を集めた。

「医療マンガ」としての観点

 2017年に世界保健機関(WHO)が行った発表によると、全世界のうつ病患者数は3億2200万人で、日本だけでも500万人を超えるという。実際、テレビ番組や新聞などのメディアにうつ病の話が取り上げられたり、周りからうつ病患者や経験者の話を聞いたりするのも珍しいことではなく、うつ病は現代を生きる我々にとって「身近な病気」になりつつある。しかし、目に見えない症状も多いことから、うつ病を経験していない人はなかなか理解できない部分も多い病気である。「うつヌケ」は、このようなうつ病の症状を可視化した作品だと言える。著者自身も10年間うつ病に苦しんだ経験があることから、うつ病患者が感じる「脳が濁った寒天に包まれているような」感覚や、「重圧感」、「不安」などが、マンガならではの視覚表現技法で分かりやすく説明されている。また作者本人だけではなく、うつとは無縁のアシスタント・カネコも登場人物の一人になっており、非経験者の持つうつ病への疑問や誤解などが紹介され、経験者による解説が行われるのも本作の特徴。病状も治療法も十人十色と言われるうつ病を多角的視点から語るべく、17人の経験談を題材にしているため、うつ病経験者はもちろん、経験したことがない人もうつ病への理解を深められる作品となっている。

【執筆者プロフィール】

ユー・スギョン
1986年韓国生まれ。京都精華大学京都精華大学大学院芸術研究科博士後期課程修了(芸術学博士)。専門はマンガ制作・研究、表現論。京都精華大学マンガ学部特任講師、同大学国際マンガ研究センター研究員。