日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Billy,Me & You:A Memoir of Grief and Recovery』
『ビリーとあなたと私――悲しみと回復をめぐる回想録』未訳

子どもの死をめぐる母親の悲しみと女性のマンガ表現

『Billy,Me & You:A Memoir of Grief and Recovery』<br> 『ビリーとあなたと私――悲しみと回復をめぐる回想録』未訳
キーワード
子どもの死をめぐる母親の悲しみと女性のマンガ表現
作者
ニコラ・ストリーテン
作品
Publication Date:2011年
Publisher:Myriad Editions

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 2歳の息子を亡くした母親である作者による回想録。作者はフェミニズムの観点から英国の女性マンガ家の歴史を検討する研究により、英国サセックス大学から博士号を授与されたマンガ研究者でもある。この回想録は、心臓病を患っていた息子が手術後ほどなく亡くなってしまった辛い体験を、10年後に回想することによって制作された。長い間、封印してきた当時の日記や息子との思い出に向き合い、2歳まで生きたわが子との日々を追憶することで、自身の耐えがたい悲しみを乗り越え、息子と過ごした楽しかった時間、母として夫とともに息子と接した交流を、ユーモアを交えて取り戻すことができるようになる。作者自身が研究対象としてきたオルタナティブ・コミックスの手法を継承するスタイルにより、本作自体も女性によるグラフィック・ノベルの可能性を探る試みになっている。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。