日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Mis(h)adra』
『ミシャドラ――てんかん患者の認識世界』未訳

てんかん

『Mis(h)adra』<br> 『ミシャドラ――てんかん患者の認識世界』未訳
キーワード
てんかん
作者
ヤスミン・オマー・アタ
作品
Publication Date:2017年
Publisher:Gallery 13

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 マンガ家、イラストレーター、ゲーム・デザイナーなど多岐にわたる分野で活躍している若手作家によるデビュー長編作。ヴィジュアル表現を用いて、病やアイデンティティのあり方を探っている。てんかんの疾患を持つアラブ系アメリカ人の大学生の視点から、日常の世界がどのように映るかを色彩豊かな表現で描く、作者自身によるてんかんの疾患体験に根差した自伝風物語である。グラフィック・メディスンの領域においても、てんかんの発作をカラーによる抽象的でスタイリッシュなアート表現で描く技法は際立ったものであり、言葉を用いた状況の説明よりも、ヴィジュアル表現で捉えようとするグラフィック・メディスンの試みを先鋭的に追求した作品になっている。てんかんの発作は周囲から見ても激しい痙攣として現れるが、疾患を抱えた内側の視点からその発作がどのように見えているか、また、日常生活を送る上でどのような困難を抱えているかを提起する。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。