日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Hole in the Heart:Bringing Up Beth』
『心の穴――ダウン症の娘ベスを育てること』未訳

ダウン症候群

『Hole in the Heart:Bringing Up Beth』<br> 『心の穴――ダウン症の娘ベスを育てること』未訳
キーワード
ダウン症候群
作者
ヘニー・ボーモント
作品
Publication Date:2016年
Publisher:Penn State University Press

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 ロンドンを拠点にする肖像画などのアーティストである著者による回想録。作者は4児の母であるが、ダウン症を抱える三女ベスに対する愛情と不安、ストレスなどが率直に綴られている。一見、他の娘たちと変わらないようにして誕生したベスが、医師からダウン症の診断を下された際に、作者は夫とともに絶望してしまう。その後も、他の子どもたちの世話をしながら、特別な配慮を必要とするベスに手を焼く局面が多くある。マンガというよりも絵画に近いスタイルにより、「普通」ではない子どもを抱えた母親の不安が心象風景を交えて描かれる。「心の穴(心臓の穴)」という題名は、ベスが心臓疾患のために手術を必要としたことに由来している。実際にダウン症の合併症として心室中隔欠損などの心臓疾患はよく見られる事例である。やがて、ベスが「普通」ではないことを個性として捉えることができるようになっていく母親の成長物語にもなっている。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。