日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Gender Queer: A Memoir』
『ジェンダー・クイア――ある回想録』未訳

クイアー

『Gender Queer: A Memoir』 <br>『ジェンダー・クイア――ある回想録』未訳
キーワード
クイアー
作者
マイア・コバべ
作品
Publication Date:2019年
Publisher:Oni Press

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 美術系の大学院にて自伝マンガを描くワークショップに参加したことを契機に、自身のセクシュアル・アイデンティティのあり方を探る体験に根差した回想録である。作者の両親は自然の中での暮らしを選ぶなど独自の教育観を持っており、ジェンダー規範を押しつけられることなく育つが、成長していくにつれて、同級生の女の子たちの関心事である「女の子らしくあること」を共有できないことに悩み、女の子たちの集まりの中でも居場所を見出せないでいるなど、ジェンダーとセクシュアリティをめぐる子ども時代からの違和感が具体的なエピソードを踏まえることによって丁寧に描かれている。自分らしくあることを肯定できるようになった瞬間に広い平原に躍り出たかのような感覚、あるいは、周囲にうまくなじめない居心地の悪さから心を閉ざしてしまう内面描写などの表現技法が読みどころになっている。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。