日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Rx: A Graphic Memoir』
『Rx――心の処方箋』未訳

双極性障害

『Rx: A Graphic Memoir』 <br>『Rx――心の処方箋』未訳
キーワード
双極性障害
作者
レイチェル・リンゼイ
作品
Publication Date:2018年
Publisher:Grand Central Publishing

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 双極性障害を抱える著者による回想録であり、自分の意思に反して半強制的な形で精神病院に2週間入院した体験を軸に、当事者の視点から双極性障害を取り巻く状況を描く。精神病院の実録マンガとしての側面も読みどころになっており、ケア提供者である精神科スタッフや、作者の家族など、それぞれの立場の違いが浮かび上がってくる。作者は精神疾患領域の製薬会社にまつわる広告の仕事に携わっていたこともあり、アメリカの製薬業界や健康保険制度をめぐる批評的な視点も鋭い。躁状態の際の世界の見え方、当事者には世界がどのように映っているかをマンガにより視覚的に表現している。人生の充実を損なうことなしに、双極性障害と共に生きる方向性を探る物語にもなっている。タイトルにある「R x」とは、ラテン語に由来し、「処方箋」を 意味する言葉である。R xを一文字にした記号としても流通して
いる。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。