日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『The Infinite Wait and Other Stories』
『はてしなく待つ、その他の物語』未訳

膠原病(全身性エリテマトーデス)

『The Infinite Wait and Other Stories』<br> 『はてしなく待つ、その他の物語』未訳
キーワード
膠原病(全身性エリテマトーデス)
作者
ジュリア・ウェルツ
作品
Publication Date:2012年
Publisher:Koyama Press

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 1982年生まれの作家による短編集。皮膚に出来る発疹が狼に噛まれた痕のような紅斑であることからラテン語で「狼」の意味を持つ「ループス」と呼ばれる免疫系の難病「全身性エリテマトーデス」を抱えた作者自身を主人公にした自伝的物語となる短編が3編収録されている。疾患をじかに取り扱う形ではなく、ゴルフボールを売ったり、ウェイトレスをしたりなどのさまざまな仕事をしながらマンガやイラストを描き、余暇を過ごす日常が題材となっているのだが、随所で疾病とともに生きる日々の感慨が綴られている点でユニークな物語になっている。繊細な配慮を必要とする免疫系の疾病とともに生きる視点から世界がどのように見えるのか、オルタナティブ・コミックスの伝統を継承したスタイル、独自の観察眼とユーモアに特色がある。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。