日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Tangles:A Story About Alzheimer’s,My Mother,and Me』
『もつれ――アルツハイマー、母と私の物語』未訳

アルツハイマー

『Tangles:A Story About Alzheimer’s,My Mother,and Me』<br> 『もつれ――アルツハイマー、母と私の物語』未訳
キーワード
アルツハイマー
作者
サラ・レヴィット
作品
Publication Date:2012年
Publisher:Skyhorse Publishing

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 アルツハイマー型認知症により母親が50代半ばで、かつての母親から変容してしまう過程を、娘の視点、ケアをする側からの視点で描く。母親のミッジはハーヴァード大学出身のインテリであり、そのために自分が簡単な言葉すら理解がおぼつかなくなってしまうことにとまどっている。父親のロブは妻の介護に献身し、言葉を失いつつある妻との言葉遊びを通して意思疎通、言葉のリハビリの可能性を探り続ける。それまでの家族のあり方が大きく変化していく中で、母と娘は新しい関係性を築き上げていく。オルタナティブ・コミックスの系譜を継承したイラスト風の画風で、ケアをする側の視点からの、もどかしさ、悲しみ、喪失などの感情が丁寧に描かれている。娘から見た両親の人生にまつわる回想録になっており、ユダヤ系カナダ人一家の家族観も本作の特色になっている。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。