日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症

パニック障害や強迫性障害と共に生きる夫婦の新婚生活

大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症
キーワード
パニック障害不安障害不眠症先端恐怖症強迫性障害強迫症潔癖症神経症縁起恐怖
作者
大原由軌子
作品
『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』
初出
『文藝春秋』
単行本
単行本『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』(文藝春秋、全1巻、2006年)

作品概要

 ユキコは地味な毎日を生きるグラフィックデザイナー。ある時バーで出会ったとても親切な男性コウキと交際2ヶ月でスピード結婚する。
 彼は料理に掃除と家事が得意、子どもが大好きで周囲の人たちにも愛されるとても几帳面な良き夫である。
 しかし端々にユキコの目から見ても几帳面すぎる性格や、理解できないエキセントリックな行動が目に付く。そう彼は神経症だったのだ。
 そんな二人の不思議な出会いから、第一子誕生までを描いたコミックエッセイ。

「医療マンガ」としての観点

 夫のコウキには「パニック障害」があり、他にもいくつもの種類の恐怖症、強迫性障害を備えている。そのため彼はパニック発作に襲われると、目眩や動機がして、手足の痺れや吐き気を催し、言いようのない恐怖のせいで歩き回ってしばしば部屋中をめちゃくちゃにしてしまう問題を抱えている。
 また外出するにも視線恐怖症があるせいで帽子を目深にかぶってマスクを付けなくてはならない、強迫性障害のために「食べ物の匂いや油が体につくのではないか」「家の鍵やガスの元栓を閉め忘れていないか」と気になって頭から離れず常に防御策や確認作業をしなければ気が済まない、さらにそれによる強迫行為がついて回るため、お米を炊くたびに毎回同じ方向で、同じ回数だけ研がなければならない、といった行動が生活の様々な場面にあらわれる。
 タイトルではおおまかに「神経症」とまとめられている夫の持つ症状だが、マンガ本編を読んでいるとその内訳はじつに細かくいろいろな分野に分かれていることに気が付く。
 この傍目から見て夫の理解し難い行動は、時に妻のユキコに理不尽な対応を迫ることになる。しかしその行動原理については当の本人も自覚しており、通院を始めそうした症状に対する事前の対策がよくできているケースといえるだろう。
 さらに結婚前にパートナーに対してそれらの障害を説明しており、説明の足りていなかった薬物療法などについてもそのつど妻に説明して理解を得ている点も共同生活を送る上で重要である。
 妻の方でも夫の気がつかなかった強迫性障害の対応策(例えば携帯電話のカメラ機能で家の鍵やガスの元栓を閉めた写真を撮るなど)を考えることで、お互いに夫婦生活をより良いものにしようと努力している。
 本書の最終話では幼い子供二人が登場し、育児に追われる夫婦の様子が描かれるが、その影響で夫の几帳面な生活様式にも変化が現れたとあとがきに記されている。その後の家族四人の生活については続刊があるのでそちらをご覧いただきたい。

※関連作品に『お父さんは神経症 大原さんちのムスコたち』(文藝春秋、全1巻、2007年)がある

【執筆者プロフィール】

うしおだ きょうじ
フリーのイラストレーター、デザイナー、ライター業兼務。日本のマンガと同程度に海外のマンガを好む。体と心の健康のために、筋トレ、水泳、ランニング、を習慣づけようと数年前から挑戦中。だが続かない。