日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

踊る産科女医

妊娠出産の正しい知識と笑えるエピソードが満載

踊る産科女医
キーワード
出産女性の病気妊娠産婦人科
作者
吉川景都
原案・監修:宋美玄
作品
『踊る産科女医』
初出
『女性セブン』(小学館、2010年17号~35号)
単行本
『踊る産科女医』(小学館、全1巻、2011年)

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

作品概要

 作者の吉川景都は、2003年に少女誌「LaLa」でデビュー。その後、初の単行本となった『24時間サンシャイン!』はギャグ四コマ、『わたしオタリーナですが。』はエッセイもの、『お疲れ様です!漫画で読める職業カタログ』はビジネスものと、幅広いテーマで作品を執筆する。原案・監修の宋美玄は、産婦人科女医のかたわら女性の性・妊娠に関する執筆活動もおこなう。2010年の『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)は50万部を超えるヒットとなった。
 本作『踊る産科女医』は、2009年に刊行されていた、宋の『産科女医からの大切なお願い:妊娠・出産の心得11ヵ条』(無双舎)の内容を、吉川がマンガ作品として編みなおしたものだ。うさぎ姿の吉川が生徒役、関西弁の宋が先生役のキャラクターとなって掛け合い漫才のようにして作品はすすむ。

医療マンガとしての観点

 本書では基本的な避妊の話から高齢出産に関する内容をあつかっており、読者の年齢層をひろく想定している。そのため全体の情報量もおおくなっているが、ふたりのテンポのよいやりとりや図解で効率よく伝えていく。情報のなかで特に分量を割いているのが、出産前の胎児の診断、胎児に重い病気が見つかったときの心構え、中絶の判断といった「赤ちゃんの障がい」に関することだ。こういった情報は妊婦にとって重要だが、保健体育の教科書のように文字主体で示されると「重く」なり、読み辛いものになってしまう。しかし、本書のようにキャラクターが表情をつけて親身に語るように描くことで、そのリスクと対処法がよりひろく伝わるようになっている。これにくわえて、「女医は見た!!ツワモノ患者列伝」など俗っぽく笑えるエピソードが差し込まれているのも、1冊通して楽しく読める工夫だ。
 なお作中、「妊娠のイメトレ」として2人分の食事にがっつくなどボケ役に徹していた吉川は、本作が刊行された数年後に育児エッセイマンガ『子育てビフォーアフター』(新潮社、全3巻)を描いている。

【執筆者プロフィール】

島村マサリ(しまむら・まさり)
編集者・ライター。20世紀の日本マンガ史とそれに関連するサブカルチャーの歴史に興味があります。