日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『El Deafo』
『エル・デフォ』未訳

聴覚障害

『El Deafo』 <br>『エル・デフォ』未訳
キーワード
聴覚障害
作者
セス・ベル
作品
Publication Date:2014年
Publisher:Amulet Books

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 作者自身の幼少期の体験を題材にした自伝的回想録であり、髄膜炎の後遺症により、主人公であるセシリア・(セス)・ベルは聴力を失ってしまう。ファンタジー世界としての「エル・デフォ」では、擬人化されたウサギの姿で大きな耳をもっているのだが、セスの耳は聞こえず、周囲の子どもたちと自分は「違っている」ことに対し、何ごとに対しても引っ込み思案になってしまっている。そんなセスであったが、特別な補聴器を使うことで、まるでスーパーヒーローになったかのような躍動感を得ることができるようになる。
 作者自身の体験に基づいていることからも、聴力を失ってしまった際に、世界がどのように映るかが、吹き出しの文字が消えてしまうなど、マンガの手法で描かれている。また、子どもならではの想像力が、ファンタジー世界を組み合わせることで表現されている点に本作の特色がある。子どもの読者にも親しみやすい絵柄であり、周りと「違っている」かもしれないことに対する戸惑いや不安などの心情が丁寧に綴られていることからも、児童書としても高い評価を得ており、アイズナー賞受賞(8~12歳向け部門)ほか、児童文学で権威あるニューベリー賞オナーブックに認定されている。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。