日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Cancer Made Me a Shallower Person』
『がんは私を浅薄な心にしてしまった』未訳

乳がん

『Cancer Made Me a Shallower Person』 <br>『がんは私を浅薄な心にしてしまった』未訳
キーワード
乳がん
作者
ミリアム・エンゲルバーグ
作品
Publication Date:2006年
Publisher:Harper Collins

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 作者は43歳で乳がんの診断を受ける。コンピューター・プログラマーとして勤務していた作者は、それまでも仕事や日常をマンガにしてネット上で発表していたが、がん告知を受けて以降の自分の経験をマンガで表現することを思い立つ。がんの発覚により人生のあり方が激変していく際の心境や境遇をマンガで記録し、マンガを描くことを通して心の落ち着きを取り戻していく。アート・スピーゲルマンの『マウス』を想起させるオルタナティブ・コミックス、グラフィック・ノベルの伝統を継承しながら、作者特有のオフビートで冷笑的なユーモアも持ち味になっている。抗がん剤による吐き気や脱毛の様子が克明に記録された、がん治療をめぐる闘病体験記、グラフィック・メモワール(回想録)であり、病と共に生きることをめぐる哲学的な人生論の趣も持つ。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。