日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Wrinkles』
『皺』日本語翻訳版あり

高齢化(アルツハイマー型認知症)

『Wrinkles』<br> 『皺』日本語翻訳版あり
キーワード
高齢化(アルツハイマー型認知症)
作者
パコ・ロカ
作品
Publication Date:2016年
Publisher:Fantographics

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 スペインのマンガ家によるアルツハイマー型認知症で記憶の欠落を抱える主人公エミリオと息子夫婦ら家族をめぐる物語。初出はフランスの出版社(2007年)によるが、母国スペインでも同年にスペイン語版が刊行[『Arrugas』(Astiberri Ediciones)]され、日本でも文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞など、この作品で世界的な名声と評価を得た。2011年にアニメーション映画化され、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーにより劇場公開されている。主人公は元銀行員であったことから融資の相談をしている場面が回想されるが、現実にはすでに引退して久しい老人であり、現実の世界に急に引き戻される落差によって、認知症から見える世界のあり方を巧みに表現している。綺麗ごとだけではなく、もどかしさや苛立ちも含めて老いの現実を描いた意欲作である。また、同じ作者による『家』(小学館集英社プロダクション、2018年)は、父親が他界し、実家を処分するために兄妹たちが再び実家に集まったことから展開される家族をめぐる物語である。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。