プロ・アマ問わぬスポーツ全盛時代にいち早くスポーツドクターに注目した作品
- キーワード
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- 作者
- 作:寺島優
画:ちくやまきよし - 作品
- 『スポーツ医』
- 初出
- 『スーパージャンプアルファ』(集英社、1994年4月25日号-1995年6月27日号)、『月刊マンガオールマン』(集英社、1995年10月号-1996年4月号)
- 単行本
- 『スポーツ医』(集英社、ジャンプ・コミックス・デラックス、全2巻、1995-1996年)
※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。
作品概要
五所河原大輔は青山総合病院の整形外科でスポーツ傷害を担当するスポーツ医。かつてはラグビーに打ち込み、大学時代には日本代表候補に選ばれたこともあるが、アキレス腱を3度も切断し、現役を断念。彼自身そうだったように、自分の体に無知なせいで、無理をして選手生命を終えざるをえない人を減らすべく、医師を志した。
彼のもとには、アマチュアからプロまで、スポーツに関するさまざまな問題を抱えた患者たちが集まってくる。複合損傷を負ったプロサッカーの花形選手、突然シュートが入らなくなった高校の女子バスケットボール選手、事故で片脚を失ったマラソンランナー、プロ野球のコンディショニングコーチ、冬山で怪我をし、コンパートメント症候群に陥ったスキーヤー、持病の腰痛でなかなかプロテストに合格できないゴルファー、半月板を断裂した力士、ドーピングをした柔道日本代表、摂食障害を抱える女子フィギュアスケート選手……。
あらゆるスポーツを愛し、努力することの意義を知る五所河原は、スポーツをめぐる非科学的な思い込みや根性論と戦い続ける。
「医療マンガ」としての観点
オリンピックを目指すマラソンランナーの神谷は、事故で片脚を失ったショックから立ち直れず、なかなか現実を受け入れられずにいる。そんな彼に五所河原が語る。「1978年ユネスコの総会で採択された体育・スポーツ国際憲章の第1条第1項にはこう書いてある」「体育・スポーツの実践はすべての人々にとって基本的権利である……ってな」。やがて神谷は、五所河原と義肢装具士の前川の説得に応じ、義足を付け、義足ランナーへの一歩を踏み出す。
スポーツがプロ選手だけのものではないことは改めて言うまでもない。第1話の最後のナレーションが語るように、「プロ・アマを問わずスポーツ隆盛」を迎え、「スポーツ医療の充実とメディカル・スタッフによる総合的健康管理体制の確立が急務」となった1990年代に、マンガの領域でいち早く「スポーツ医」に着目したことは本作の意義として強調すべきだろう。
第2巻収録の第10話には肘の故障に悩むドラフト直前の高校球児が登場する。かつてほどではないにせよ、高校野球における投手の酷使が今なお問題になっていることは周知の通りだろう。1990年代半ばの作品であるだけに、設定や演出が古びている感は否めないが、本作はそのアクチュアリティを必ずしもまだ失ってはいない。