日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

ラジエーションハウス

放射線技師から見た現代医療―患者の見えない病を探る「画像診断」の世界

ラジエーションハウス
キーワード
放射線技師放射線検査室放射線科医vX線撮影画像診断
作者
作:横幕智裕
画:モリタイシ
作品
『ラジエーションハウス』
初出
『グランドジャンプ』(集英社、2015年22号-)
単行本
『ラジエーションハウス』(集英社、ヤングジャンプコミックス、既刊10巻、2016年-)

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

作品概要

 CT、MRIといった放射線、磁気による医療検査機器を扱う放射線技師を主人公とした医療マンガ。
 主人公の五十嵐唯織(いがらしいおり)は幼少期に「放射線科医になる」という少女と交わした約束を守るために放射線技師として働いているが、対人関係に疎く職場を転々としていた。
 念願かなって「約束の少女」である放射線科医、甘春杏(あまかすあん)が在籍する甘春総合病院に職を得た五十嵐はその変人ぶりで周囲と軋轢を生みながらも、真摯に患者と向き合おうとすることでその優れた技術と知識を発揮し、隠された病変をあきらかにするだけではなく、周囲の医師や同僚技師たちの意識も変えていく。だが、五十嵐には同僚たちにも明かしていないある秘密があった……。
2019年にはフジテレビ系列で連続テレビドラマ化もされている(主演、窪田正孝)。

「医療マンガ」としての観点

 医師でも看護師でもなく「放射線技師」という技術職の病院職員を主役に据えたおもしろい着眼点で描かれた作品。
 物語としては主人公とヒロインのすれ違いという典型的なロマンチックコメディの構図を用いつつ、いっぽうで主人公だけではなく放射線検査室(ラジーエションハウス)の技師たちを中心にドラマを展開することで、医療現場における医師と技師の違いやその関係性、登場人物たちの価値観の違いからくる軋轢などが患者の具体的な症例を通して浮き彫りにされていく骨太な医療ドラマとなっている。
 特にCTやMRIの画像から病因を特定していく「読影」や医療検査機器を使用する際の撮影技術などはこれまでの医療関連のマンガ、ドラマなどではあまり描かれてこなかったモチーフであり、こうした視点から提起される医療上のトピックや問題点(たとえば検査の順番待ちや検査結果の判断にまつわる情報開示など)、職場としての病院の状況などはほとんどの読者にとって斬新かつ興味深いものだろう。
 また、主人公の「秘密」やヒロインとその家族が抱える問題点が徐々に明かされていくストーリー展開は個別の患者にまつわるエピソードを超えて作品全体としてミステリ的な興味を持たせるものにもなっている。
 最近ではマンガにおいても「医療監修」などの名目で専門医が監修していることが多いが、本作では放射線科医と並んで診療放射線技師も監修者としてクレジットされており、この点からも編集部、原作者のテーマに対する丁寧なアプローチがわかる。

【執筆者プロフィール】

小田切博
フリーライター、アメリカンコミックス研究。著書『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』(NTT出版)、『キャラクターとは何か』(筑摩書房)、共編著『アメリカンコミックス最前線』(小野耕世との共編、大日本印刷)。