日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

今夜もホットフラッシュ―更年期越えたら人生パラダイス

女性だけでなく男性も読むべき作者とともに学ぶ更年期障害

今夜もホットフラッシュ―更年期越えたら人生パラダイス
キーワード
ヒステリーホットフラッシュホルモン補充療法不定愁訴症候群不眠症内分泌低下多汗症子宮筋腫心因性更年期更年期うつ更年期障害耳鳴り自律神経失調症自律神経性閉経
作者
青沼貴子
作品
『今夜もホットフラッシュ―更年期越えたら人生パラダイス』
初出
「WEBコミックエッセイ劇場」(2013年2月-4月)に加筆
単行本
『今夜もホットフラッシュ―更年期越えたら人生パラダイス』(株式会社メディアファクトリー、2013年)

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

作品概要

 アラフィフを迎えた作者は、子供たちが成人して手がかからなくなり、いよいよ自分の時間を満喫できると、ママ友たちと遊びに出かける算段をしている。ところが、喜んだのも束の間、突然のホットフラッシュが彼女を襲う。ホットフラッシュとは突然顔が熱くなり、汗が噴き出す症状。頻度は人さまざまで、一日に10回以上起きることもあるという。ホットフラッシュが治まると、今度は汗が冷めて急な悪寒に襲われる。それ以外にもさまざまな体の不調が彼女を悩ませ始める。そう、アラフィフになって、彼女は更年期に突入してしまったのだ。
 同じように更年期障害に悩まされるママ友たちと連れ立って、作者はママ友のひとりの姉で医者をしているナオおねーさまに、更年期について話を聞きに行く。
 こうしてタイトルにもあるホットフラッシュから、動悸や不眠、イライラ、肩こり、さらには更年期うつに至る更年期障害の症状、そして更年期障害の治療法や更年期と向き合う心構えなど、更年期にまつわるあれこれが、解き明かされていくことになる。
 子育てマンガの名作『ママはぽよぽよザウルスがお好き』で知られる作者の、更年期エッセイマンガ。

「医療マンガ」としての観点

 作者は男性編集者との打ち合わせ中に、突然、胸の動悸と顔のほてり、噴き出す汗に襲われる。これは更年期障害の症状なのか、それとも恋なのか……!? 結局、更年期障害という結論に落ち着くのだが、心配する編集者に、作者は「大丈夫です/最近暑がりになっちゃって…」と答えてお茶を濁す。それも仕方あるまい。何しろ「更年期のない男性に説明するのはめんどくさい」のだ。
 なるほど、このレビューの筆者は40代半ばの中年男性だが、更年期や更年期障害の症状についてこれまでただの一度も考えてみたことがなかった。女性であれば、大体45から55歳までの間にほぼ更年期の症状が出るということだから、身近なところでは筆者の母親にだって更年期はあったはずだが、心配したことも、そのつらさを想像してみたこともなかったのだ。本書を読んで申し訳ない気持ちになった次第である。
 そもそも男性に更年期障害がないというのは本当なのだろうか? それについても作者の夫を例に一章が費やされている。結論から言えば、男性にも更年期はあるらしい。本書には登場しないが、「男性更年期障害(LOH症候群)」なるものもあるようだ。これから更年期の年齢に差しかかろうという筆者にとっては他人事ではない。
 本書はアラフィフ世代の女性にとっては共感必至の、アラフォー未満の女性や男性にとっては想像力を養う絶好の機会を与えてくれる貴重な作品である。

【執筆者プロフィール】

原 正人(はら まさと)
1974年静岡県生まれ。フランス語圏のマンガ“バンド・デシネ”を精力的に翻訳紹介する翻訳家。フレデリック・ペータース『青い薬』(青土社)、ダヴィッド・プリュドム『レベティコ―雑草の歌』(サウザンブックス社)など訳書多数。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』(玄光社)がある。

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