変わりダネ看護師のワールドワイドな奮闘記
- キーワード
- エスコート・ナース外国人患者旅行先での病気
- 作者
- 世鳥アスカ
原案:山本ルミ - 作品
- 『患者さまは外国人:無国籍ドクターと空飛ぶナースのドタバタ診療日誌』
- 初出
- 単行本に初出情報記載なし
- 単行本
- 『患者さまは外国人:無国籍ドクターと空飛ぶナースのドタバタ診療日誌』(CCCメディアハウス、全1巻、2014年)
※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。
作品概要
本書は、六本木に実在した「インターナショナル・クリニック」(2014年閉業)を舞台にした、「無国籍ドクター」と「空飛ぶナース」が登場する実録マンガである。
「無国籍ドクター」ことエフゲニー・アクショーノフは、ロシア系の両親のもとで満州に生まれ、戦前に医学を学びに日本にわたってきたが、敗戦後と同時に祖国を失う(その評伝は『六本木の赤ひげ』(集英社、2003年)にもまとめられている)。戦後間もなくして、旅行や仕事で来日した外国人を専門に診るインターナショナル・クリニックを設立した。また「空飛ぶナース」こと山本ルミはこの病院の看護師として勤める。また、そのかたわら「エスコート・ナース」という顔も持っている。エスコート・ナースとは、保険会社からの要請で、急病や怪我で自力で移動できない患者を希望の場所まで送り届ける仕事である(山本はエッセイ『空飛ぶナース』[新潮社、2007年]を著している)。
本書の前半では、イスラム教の患者が断食中に脱水症状で運び込まれた話、フランス語で検尿が説明できず困った話など、インターナショナル・クリニックならではの文化ギャップを感じさせるエピソードが描かれる。後半は、エスコート・ナースのエピソードが中心で、突然の要請で目的地に向かい、休むことなく患者の帰国に付き添う珍しい仕事の流れが紹介されている。
医療マンガとしての観点
人が病気になったりケガを負ってしまうことには場所を選ばない。むしろ慣れない異国の地で体調を崩してしまうことがある。そんなとき、自分が理解できる言葉を話せたり、海外事情に理解があったりする「無国籍ドクター」や「空飛ぶナース」に診てもらうことはどんなに心強いだろうか。山本と外国人との間のカルチャーギャップのエピソードは思わず吹き出してしまうが、それと同時に、作者の世鳥アスカは患者が医師や看護師に診てもらい安心する場面を印象的に描いている。本書は、医療が単に治療をするだけでなく、社会において人に安心を与える役割をもっていることがよくわかる一冊になっている。