日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Cancer Vixen:A True Story』
『がんに挑む女――本当に起こった物語』未訳

乳がん

『Cancer Vixen:A True Story』 <br>『がんに挑む女――本当に起こった物語』未訳
キーワード
乳がん
作者
マリサ・アコセラ・マルシェット
作品
Publication Date:2006年
Publisher:Knopf Publishing Group

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 『ニューヨーカー』や『ニューヨーク・タイムズ』などに寄稿しているマンガ家である作者が、ある時、胸にしこりが発覚し、しかもその時点で保険未加入であった体験をめぐるグラフィック・メモワール(回想録)である。大手の媒体で活躍している作者だけに、雑誌のイラストのように明解でわかりやすい絵柄に特色があり、その後、乳がんの診断を受けることになる過程を、一般の読者にも伝わりやすく表現している。中でも、医療費の高いアメリカで保険未加入であることの大変さをコミカルに描き、啓発的な役割もはたしている。次々にふりかかる厄介ごとをたくましく乗り越えていく語り手の姿がすがすがしい。その後、この作品の題名を冠した基金をニューヨークの病院に設立し、自ら会長をつとめるなどの支援活動も展開している。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。 

グラフィック・メディスン創刊準備号