日本の医療マンガ50年史
医療マンガレビュー

『Becoming Unbecoming』
『無作法になること』未訳

性差別を受けたトラウマ

『Becoming Unbecoming』 <br>『無作法になること』未訳
キーワード
性差別を受けたトラウマ
作者
ウーナ
作品
Publication Date:2015年
Publisher:Myriad Editions

※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。

 英国在住の作家によるデビュー長編作品。12歳の少女ウーナの視点から、「ヨークシャー・リッパ―(切り裂き魔)」として知られる1977年に発覚した英国のシリアルキラー事件を捉える物語として、女性嫌悪、性差別、女性に対する暴力が主題とされている。売春婦を主に狙い10人以上を殺害し、死体を残虐に破壊した連続殺人事件と、ウーナ自身が巻き込まれた性暴力事件、周囲から受けたハラスメント、トラウマ体験が重ね合わされる。「フェミサイド」と呼ばれる女性に向けられた暴力事件は、現代においてもさまざまな形で起こってしまっている現実があり、「ヨークシャー・リッパ―」の加害男性における歪んだ女性観がどのように形成されてきたのかもすでに重要な論点となって久しい。性に対する意識を持ちはじめる12歳の少女の視点から、歴史的事件と自身の体験を通して、女性嫌悪と性差別の世界に生きることの違和感と困難を問う野心作。

【執筆者プロフィール】

中垣 恒太郎(なかがき こうたろう)
専修大学文学部英語英米文学科教授。アメリカ文学・比較メディア文化研究専攻。日本グラフィック・メディスン協会、日本マンガ学会海外マンガ交流部会、女性MANGA研究プロジェクトなどに参加。文学的想像力の応用可能性の観点から「医療マンガ」、「グラフィック・メモワール」に関心を寄せています。 

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