「ドタバタコメディ4コマ」への路線変更が示す「医療マンガ」執筆の難しさ
- キーワード
- 4コママンガコメディ
- 作者
- 藤島じゅん
- 作品
- 『あぼばクリニック』
- 初出
- 単行本に初出情報記載なし
- 単行本
- 『あぼばクリニック』(竹書房、バンブーコミックス、全3巻、2005-2008)
※「初出」は単行本のクレジットに基づいています。
作品概要
診療所「あぼばクリニック」院長の女性内科医・大神乙菜、ドジばかりのミニサイズ看護婦・琵琶びわこ、そして大神の同期で助っ人にやってきている真面目な外科医・永徳寺英治と彼の指導を受けている虚弱体質の研修医・我孫子万太郎という4人のキャラクターを中心とした、ギャグ4コマ作品。
強くデフォルメの効いたキャラによる、スラップスティックな展開を得意とする作家の手による本作。単行本第2巻のあとがきで「医療知識そっちのけ、「診療所のドタバタコメディ4コマ」に路線変更してます」と率直に記されているように、細かな医療関係のディテールにはとらわれず、キャラ同士の畳み掛けるような掛け合いを中心としている。最終巻となる第3巻では登山やプール、温泉旅行と診療所以外で展開するエピソードも増えるなど、掲載誌(『月刊まんがライフMOMO』竹書房)の性格を反映した、キャラの魅力中心で牽引していくタイプの4コママンガ的スタイルへと着地している。
「医療マンガ」としての観点
「笑って元気になって欲しい」というギャグ4コマの側面に加え、医薬的豆知識を紹介することで「いざという時に思い出して役に立てたら」という、そのふたつの想いが執筆の動機だったという本作。だが作者自身があとがきで吐露するように、医療従事経験もなく、専門的知識の面をフォローしてくれるような監修者もいないなかのネタ出し・執筆は困難を極めることとなり、上述の路線変更へといたることとなったという。
同作者のバイト経験をもとにしたコンビニのディテール描写を盛り込んだギャグ4コマ『コンビニぶんぶん』(竹書房)や、二児の母としての育児経験を描く『マママのお仕事』(ジャイブ)では、作者自身の経験がうまく作品のなかへと落とし込まれている。そうした作品と比較すると、自身の傷病経験ではなく専門的な医療知識に関する「医療マンガ」を監修者のサポートなしで描こうとすることの、ハードルの高さを示した作品とも言えるだろう。