
グラフィック・メディスン大賞(The GMIC Awards)は、医療と漫画を融合させた優れた作品を表彰する国際的な賞です。この賞は、2022年に非営利組織GMIC(Graphic Medicine International Collective)によって創設されました。GMICは、漫画を活用した医療・ヘルスケア分野での新たな可能性を追求し、その価値を広めることを目的としています。毎年、前年度に出版された優れた漫画作品の中から、医療とアートの融合により生み出される深い感動を与えた作品や医療・ヘルスケア分野に関わるさまざまな理解の促進に貢献した作品を選出し、表彰しています。
この記事では、2023年に完成・出版された優れた健康関連のコミックを表彰する GMIC Awards 2024 の受賞作品を紹介します。第3回となった2024年は、89の応募作品の中から、長編部門と短編部門それぞれで優れた作品が選ばれ、特別賞も授与されました。
長編部門
受賞作: Nervosa
- 作者: Hayley Gold
- 内容: 作者自身の摂食障害(神経性無食欲症)との闘いを描いたグラフィック・メモワール。入院生活、治療、社会との関わりを通じて、病と共に生きる葛藤を浮き彫りにする。
- 評価: 「読むのが困難なほどのリアルな描写と、鮮やかな色彩によるビジュアル表現が秀逸。自己と病の関係性を深く掘り下げた作品。」

特別賞: The Cliff
- 作者: Manon Debaye(翻訳:Montana Kane)
- 内容: 若き親友2人が秘密裏に交わした「5日後に崖から飛び降りる」という約束を軸に、青春の孤独や社会の圧力を描く。
- 評価: 「色鉛筆の温かみあるトーンで、10代の苦悩と友情の繊細な機微を表現。ロミオとジュリエットのような悲劇性を持つ、普遍的なストーリー。」

ノミネート作品
- Going Remote: A Teacher’s Journey(Adam Bessie & Peter Glanting)
- Muscle Memory: A Survivor’s Story(Al Davison)
- Silence, Full Stop: A Memoir(Karina Shor)
- T(H)UMOR, Dear Cancer Diary, …(Federico Muelas)
短編部門
受賞作: Spiral Sessions
- 作者: Elaine M. Will
- 内容: 不安障害の発作がどのように発生し、どのように悪化するかを可視化した個人的なエッセイコミック。
- 評価: 「デジタルインクを活用した独特のアートスタイルと、スパイラル状に増幅する不安の巧みな表現が印象的。人間の基本的な感情を深く掘り下げた作品。」

ノミネート作品
- Empathy 101: How medical schools are using improv theater, virtual reality and comics to help physicians understand their patients(Josh Neufeld)
- Advocating for Diastole(Ankit Mehta, MD & Tseganesh Selameab, MD)
- COMMUNION(Juliette Yu-Ming Lizeray)
- Medical Gaslighting(Janice Goldberg)
総評
GMIC Awards 2024 では、精神疾患、摂食障害、がん、移民の孤独といったテーマ に焦点を当てた作品が選ばれました。特に受賞作は、個人の経験を通じて、医療制度や社会の課題を浮き彫りにする作品 ばかりでした。
GMIC は今後も 「コミックを通じて医療と社会をつなぐ」 ことを目指し、優れたグラフィック・メディスン作品を発掘・支援していきます。
GMIC Awards 2025 では、新たに、教育漫画部門が新設される見込みで、作品の長さを問わず、教育目的で制作された作品にも門戸が開かれることになりました。医療トピック、治療法、疾患、医療機器、生物学的機能などを扱い、医療従事者や学生、患者、介護者、一般市民への教育を目的とした作品も対象となることが想定されています。
来年の GMIC Awards も、さらなる名作に出会えることを期待しています。